アマゾン・マーケット・プレイス(AMP)と「なか見!検索」

 AMPについては、出品したことも、買ったこともないので、それほど注目していませんでした。とはいえ、京都の三月書房さんが出しているメルマガ「三月書房販売速報[083]」によると、アマゾンは「1円の商品を出品しても、出品者とアマゾンが損をしない」という、ものすごく合理的な仕組みをつくりあげているようですね。驚きました。以下、同メルマガから引用いたします。

AMPでの値下げ競争は、たとえば「世界の中心で、愛を叫ぶ」の単行本は現在たったの9円ですが、1円で売ってる本も少なくありません。1円で売っても損しないのは、送料が一律260円もらえるので、佐川急便あたりと大口契約すれば半分の130円位は残るからです。アマゾンの取り分は1円の15%ですから儲けにならないように見えますが、ここも送料の差額が1冊あたり80円あるので損はありません。1円とはいえ、購入者は送料340円がかかるわけですが、1円で売買してだれも損しないというのは、AMPがまことに合理的なシステムであることの立派な証明といえるでしょう。

一方、別のエントリーで「なか見!検索」に参加すると書きました。参加する理由の第1は、ネット書店を利用する読者に対するサービスの一環です。本を買おうと思ったら、立ち読みできないより、できたほうがいいでしょう。非常に単純です。
第2は、本文をネットに流すことにより、より多くの方がたが弊社の書籍と出会えると思いますし、利用していただけるようになる、という点です。一般読者から研究者まで、幅広い分野の方がたに読まれ、引用されることは、版元にとっても著者にとっても、意味のあることだと考えます。本をつくったら、けっきょくは読まれてなんぼ、引用されてなんぼ、参照項になってなんぼの世界だと私は思っていますので。

アメリカのアマゾンでは、ページ単位での購入も可能になっているとのこと。これも、ネット社会の潮流からいえば、必然的な流れであると思います。ネット書店も版元も、読者からお金をもらって、バラ売りできるうちがハナであり、最終的にはネット版は「無料でどうぞ」ということにもなりかねません。そして、それは仕方のないことだと私は思っています。もちろん、いますぐにそうなる、というのではありません。近未来の話です。

そうなると著作権の問題が出てくるでしょう。ネットで流した文書(それが版元が発売する書籍の一部または全部であれ)に「著作権」があるのかどうか、また、その「著作権」にこだわりつづけるのがどうなのか、という問題ですね。法大の白田さんが研究されている問題です。
私は、モノとしての書籍については、これからもずっと、著者とともに「著作権」を保持しつづけると思います。それが根拠になって、生活の糧が得られるわけですし、著者に印税を払うこともできるからです。とはいえ、アマゾンであれどこであれ、ネットに流す文書(書籍の一部または全部)については、著者と厳密なる相談をしたうえで、「著作権フリー」にしてしまうことも、ひとつの方向性だと思っています。当然、ネットに流した文書であっても、「著作権」があると考えられ、売れるとお金が入ってくるシステムが機能しているうちは、それにしたがうつもりですが。

いずれにしても、本を送ると、ネットで立ち読みできてしまうところまでの作業(これは、けっこうたいへんな作業でしょう)を引き受けてしまうアマゾンの覚悟は、半端ではありません。以上の通り、私にはこのシステムに抗う理由がないので、そのまま乗っかることにしました。