「空手バカ一代」&「仮面ライダー」&統一教会


「不思議ナックルズ Vol.8」(ミリオン出版)に興味深い記事が掲載されていました。
それは『「空手バカ一代」と「仮面ライダー」に隠されたメッセージ』という記事です。

記事の内容は、第一に「空手バカ一代」(以下、「バカ一代」という)の主人公であり極真会館創始者である大山倍達は、日本と韓国の二重国籍を持っていたこと。第二は、「バカ一代」の内容は原作者・梶原一騎がつくり出した虚構であり、とりわけ読者に日本の武術「空手」を紹介しつつ大山を日本人だと思わせたことは問題だという指摘。


第三は、「バカ一代」の連載がはじまった一九七一年に、韓国でも「大野望」というテコンドーの使い手を主人公とする「バカ一代」とそっくりのマンガが連載開始となったこと。第四は、統一教会の傘下である国際勝共連合と、70年当時に同連合の名誉会長であった笹川良一とのつながり、そして笹川と日本の空手界との深いつながりを指摘。


第五は、大山は笹川が会長をつとめた全日本空手道連盟には加盟しなかったが、笹川の懐刀であった自民党代議士・毛利松平が極真会館二代目会長になるなど、大山と笹川は太い資金パイプで結ばれていた点。第六は、以上のことから反共つながりとして「朴大統領−統一教会−岸・福田−笹川良一−毛利松平−大山倍達」という人脈が浮かびあがること。


結論として、記事の筆者である佐田恭三さんは、日韓同時にはじまったマンガによる「倍達伝説」の背景は、「当時の両国の内政危機を反映させた右派勢力の民間工作だった」と指摘している。くわえて、「バカ一代」と同時期にマンガ連載がはじまり、71年にはテレビ放映がはじまった「仮面ライダー」についても、同番組の主演男優である藤岡弘(現・藤岡弘、)が統一協会員であったからこそ、政治的な力がはたらいて新人である彼がいきなり同番組に主演できたことを指摘。ライダーの技に空手が導入されたのも、政治的な力が働いていたのではないかという。


さて、この記事を読んだ私は、まず単純に「へぇ〜、そうだったのか」と思いました。リアルタイムで「バカ一代」を愛読していたし、「仮面ライダー」を視聴していたので、その裏に隠された思惑(どこまでが本当のことなのかは、微妙な感じもしますが)があきらかになり、おもしろがって記事を読むことができました。


一方、当時の反共勢力が巧妙に、子ども向けのメディアに反共的なメッセージを入れ込んでいたのだとしても、私自身はまったくそれに気づくことはありませんでしたし、その影響もほとんど受けていません。「バカ一代」も「仮面ライダー」も、ただただヒーローものの楽しくスリリングな物語として見聞きしていただけでした。極真会館に入りたいなどとは思いませんでしたし。これらのマンガやアニメにのっかって、極真会館に入ったり、反共活動をした人って、どれくらいいるのでしょうか。すくなくとも、私の周囲にはいなかったような気がします。


佐田さんは記事の末尾で、共産勢力が弱体化したのにともない、反共勢力の必要性がなくなった現在、上記で紹介した70年代のような反共側によるメディア戦略はありえないものの、「国家の内政が危機的になれば、どんな政治的メッセージもメディアに入り込んでくるものなのだ。そのことを私たちは注意しなければならない」とまとめています。
まったくそのとおりだと思いますが、少年時代に楽しく視聴した「バカ一代」と「仮面ライダー」という作品を、政治的な思惑が裏にはあったということで、単純に断罪してしまうような切り口はどうかなあ、とも思いました。


ちなみに「藤岡弘、」さんについては、いきなり名前の最後に「、」をつけたり、ご自宅で見たという不思議な振る舞い(by 藤岡さんの自宅で取材した知人による)から、「ちょっと変わった人だなあ」とは思っていましたが、統一協会員であることは知りませんでした。本人が公言しているのかな?


いずれにしても、大山さんも藤岡さんも、みずから「私は統一協会員です」といってはいないのであれば、統一教会に賛同したり協力していたというだけで「統一教会と深い関係にあった」とか「統一協会員」と決めつけてしまうのはどうかと思いました。いうなれば、それは戦旗派の雑誌「理戦」に論文を投稿しているから、宮台さんは戦旗派の人間だと決めつけてしまう愚のようなものです。人の風評、とりわけ宗教や政治にかかわるものについては、そういうことに注意しながら読む必要がありましょう。


あと、「不思議ナックルズvol.6」の記事では、「アニメ・キャラ姓名判断」というのがおもしろかったです。のび太は大大吉、ドラえもんは凶だとか……。