仲正さんの「まえがき」を公開した理由

 昨日、仲正さんの文章をブログにアップしました。本来ならば、自身のブログにそれをアップすればいいのですが、仲正さんはブログをやっていないので、ここで公開した次第です。
 すでに本を買っていただいた方のなかには、「買った本の内容を公開すべきでない」と思われる方もいるでしょう。とはいえ、本に書いたものの著作権は、主に著者に帰属し、つづいて出版社に属するものだと私は考えています(もし間違っていたら、ご指摘ください)。ですから、著者と出版社が「ネットに公開しよう」と合意すれば、基本的には公開は可能になるものだと思います。宮台さんのwebページがよい例ですが、著者がみずから執筆した文章を、ネットで公開することには何の問題もありません。たとえ、それが該当する本の発売前であっても。
 こうした公開を、読者の方がたは、どう思っているのでしょうか。とりあえず出版社側の考えは、こうです。第一に、まえがきやあとがきは、本文全体から見れば数%の分量であり、それらが公開されても、本文の内容はほとんど公開されません。第二に、それらを公開することは、企画の成立経緯がわかり、また対談本であれば著者同士の関係性がわかり、「この本、面白そうだな」と読者に思っていただく材料を提供することになると思います。第三に、宮台さんは刊行前に公開しますが、刊行から一定の期間が経過してから本の一部を公開することは、未開拓の読者への営業戦略としても有効だと考えます。
 ざっくりと書きましたが、以上のようなことで、仲正さんと協議のうえ、「まえがき」を公開した次第です。今回を皮切りに、著者と相談したうえで、このような方針はつづけていこうと思っています。

 さて、こうして本の一部を世の中に晒すことにともない、もっとも危惧されるのはコピペ(コピー&ペースト)の問題でしょう。大学生の卒論がコピペで書かれてしまうくらい、ある種の文章作法として普及している(!?)と、宮台さんや仲正さんから聞いています。
 ネットで公開したということは、基本的にコピペはフリーだと考えてかまいません。ただし、著者による思考の結晶としての文章を使うときには、いくつかの仁義を重んじてほしいものです。

 仁義その1) まえがきやあとがきも、本一冊の文脈のなかで書かれていることなので、しっかりと本を読んで、どんな文脈でそれが書かれているのかを理解したうえで、コピペをする。
 仁義その2) 部分的な使用であっても、出典(出所)を明記する。本であれネットであれ。
 仁義その3) 批判や批評、罵詈雑言、誹謗中傷をする場合には、書き手の名前やidを明記する。

 仁義その3については、いろいろと意見があることでしょう。「自分の名前を書くと、悪口が書きづらくなる」とか「ネットなんだから、匿名でもいいじゃん」などなど。しかし、人の書いたものを批判したり悪口をいう場合には、書かれた対象となる人を不快にしてしまう責任が、書いた人には生じるわけですよね。また、批評や批判の場合には、書かれた側にも応答する責任が生じます。そういった責任関係をクリヤーにするには、やはり名乗るという行為は必須だと私は思います。そんなのどうでもいい、と思うのであれば、書き込みなどしないほうがいいし、そう思って書かれる書き込みは、対話としての意味がないので削除されても仕方がありません。
 ただし、匿名でもいい場合があります。それは内部告発です。もちろん、象牙の塔の内紛に関するくだらない告発とか、誹謗中傷目的のスキャンダラスな内容のものは論外。組織や社会の問題点で、隠蔽されている膿の部分を告発する場合で、なおかつ名乗ってしまうと書いた方の生活がたちいかなくなってしまうような場合は、匿名でもかまいません。
 こうした簡単な仁義を重んじるようにすれば、「炎上」することなどないとは思うのですが……。そう思いつつも、人のルサンチマンや怨念は、「そんな仁義なんて、守ってられるか!」という強い思いを抱かせてしまうのかもしれませんね。

 いまさら教科書的なことばかり書いているんじゃねえ、と叱られそうです。しかしながら、このブログは出版社のwebページの出張所と位置づけているので、話が通じない人から著者を守る必要があることから、このようなことを書いています。まあ、これを書いたからといって、どこまで著者を守れるのかは疑問ですが、以上のような意志を著者や読者に知っていただくことには、それなりの意味があるような気もします。
 というわけで、繰り返しますが、文脈を理解してコピペをして、コピペの際には出典を明記して、悪口を書くときには名乗ってください。
 よろしくお願いいたします!