内田春菊さんと打ち合わせ

 昨年、吉野斉著『レクイエム』という本を出しました。解離性同一性症候群(いわゆる多重人格)の女性による手記です。こういう人が世に存在するということを、ひとりでも多くの人に知ってもらいたい、という動機で出した本です。
 治療が困難で、症状も重く、社会が面倒を見る必要のある病気のひとつだと思いますが、役所には「よくわからない病気」だと思われており、法的な救済手段が確立されていない病気でもあります。
 で、この本の装丁イラストは「内田春菊さんしかいない!」と勝手に思い込み、連絡をしたところ、なぜか快諾いただけたのでした。そうしたご縁で、事務所兼ご自宅に何度かお邪魔するようになりました。
 内田さんとは、知る人ぞ知る売れっ子の漫画家です。恋愛と性、精神、そしてユーモアなどを素材に、とっても面白い作品を長年にわたり書き続けている方です。舞台や映画、ドラマに出演したり、小説を書いたりもしています。いまさら書く必要もありませんね。

 昨日は、「父親」をテーマにして何か本ができないか、という相談をしにいきました。内田さんは、いきなりアサリと塩水の入った透明のボールをテーブルに置き、「これを置いておくと、打ち合わせがスムーズに進むのよね」なんていいだしたのでびっくり。私の訪問の前日、某社の編集さんが来たときに、アサリを置いたらいい感じだったとのこと。
 それで、打ち合わせらしきことを話したのは、合計15分くらい。四方山話をしているうちに、何時間もたったしまいました。何をやるのかほとんど決まらぬまま、「じゃあ、家で企画書のたたき台をつくっておきますね」といって私は内田家をあとにしました。
 私が自信をもって持参した「やなか珈琲店谷中本店」の「キリブレンド」(なんとカンボジア王国ラタナキリ産)を飲みつつ、おいしいパンプキンケーキをいただきつつ、2階で子どもたちがワーギャーいいつつ、お話しいたしました。
 内田さんの家にいくと、いつもこんな感じです。

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ベッドの中で死にたいの (文春文庫)

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