鏡リュウジさんが「週刊朝日」でスピリチュアルブームを批判、その鏡さんを小谷野さんが批判?


昨日が鏡さん絡みの日記だったので、今日も引き続き、鏡さんに関するネタで。

週刊朝日」の「スピリチュアルブームここがおかしい」という記事で、鏡リュウジさんがスピリチュアルブームを批判しています。その記事に対して、小谷野さんが以下のような批判をしています。

猫を償うに猫をもってせよ(12月28日)
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20061228

小谷野さんのご指摘については、半分くらいは同意できます。もしこの記事がメディアの罪を問題視しているのだとすれば、全面的に同意いたします。とはいえ、「インチキ」「オカルト」に関する記述については、僭越ながらあまりにも大ざっぱに区分しすぎているような気がいたします。


第一に、「インチキ」のまま垂れ流し、それを生業にし、「インチキ」ぶりを隠蔽する人がいます。第二に、「インチキ」を「インチキ」だと指摘しつつ、「インチキだと思う人がいるかもしれないけれど、そのインチキが役に立ったり、インチキで救われたりするのなら」ということで「インチキ」を生業にする人がいます。


第一については、ニューエイジをはじめとする胡散臭いカルト宗教と同根だと思いますので、徹底的に批判されてしかるべきだと思います。第二は、いうまでもなく鏡さんのような方のことを示します。占いを生業にしていながら、スピリチュアルなものや占いを、「インチキ」なものかもしれないんだよと一般の人びとに対して警鐘を鳴らす。いわば、占いを実践しつつ、占い的なものをアイロニカルに見ていて、なおかつその見方を公言してしまう。


この第一と第二の差は、きっと小谷野さんには五十歩百歩なのかもしれません。しかし、私はこの差が、かなり大きいと思うんですよね。スピリチュアルや占いに対する鏡さんのアイロニカルな発言は、いわば手品師が手品のネタをばらしているようなものです。ふつうは商売になりません。ところが、ネタばらしをしている手品師の手品を見たいという人が、実際にたくさんいます。基本的には、手品師はネタをばらさないからウケるし、商売が成り立つわけですが、ネタをばらしてもウケていて、商売を成立させている手品師がいる。この違いは、大きいと思います。


文章であれ何であれ、メディアに露出することを生業にしている人の命は、とても儚いものです。それは、メディアに露出するためには、メディアの受け手に一定の支持をされている必要があり、その支持を察知したメディアが、その人を起用するからです。人気がなくなればポイッで、人気があれば誰でも起用という世界ですからね。
そういう意味でいえば、本人が文化人面をしているというよりも、メディアがその人に文化人面をさせるように仕込んでいるような形態も多いのではないかと思います。それも、たいていはタイムリーに人気のある人を起用するわけですね。


ここで注目すべきは、文化人面しているかどうかということよりも、その人がタイムリーに人気があるという点です。テレビ番組の編成が一般の人びとの嗜好をモロにあらわすのと同様に、メディアに起用される評論家やコメンテーター、タレント、歌手などは、一時的にであれ、一般の人びとの多くに支持されているという現状があります。
ならば、占いをやりながら占いに懐疑的であるような鏡さんが、多くのメディアに起用され、一般の人びとに支持されているということは、一部の占い一本槍で勝負している人が跋扈するメディア業界において、貴重な現象だと思うんです。


小谷野さんは、上記のような現象を「鏡のような『占星術師』が文化人扱いされていることがいちばんおかしいのだよ。安倍晋三が『自民党政権がこんなに続くのはおかしい』と言っているようなものだ」と指摘されております。このご指摘で、小谷野さんがメディアのおかしさを批判されているのなら、いたってまっとうな見解だと思います。しかしながら、もし「鏡さんがスピリチュアルブームを批判すること」が、「安倍晋三が『自民党政権がこんなに続くのはおかしい』と言っているようなものだ」ということならば、それは批判すべきことではなく、「それでもぜんぜんいいじゃん」と私は思います。


いろいろ書きましたが、鏡さんは自称「インチキ占い師」ですから、小谷野さんのご指摘を、目を細めながら読んでいるかもしれません(笑)。そういえば、宮台さんも自称「インチキ社会学者」でしたね。インチキを自称する人ほど、信用できる人であるような気がするのは、私だけなのでしょうか!?


じつは、私はヘビースモーカーなので、小谷野さんのタバコに関する論調には、ほぼ同意しております。また、歯に衣着せぬ論壇や論壇人、そして大学業界への批評は、その勇気に感動するとともに、読んでいてスカッとすることが多いんですよね。
今回の鏡さんのエントリーについては、すこし引っかかってしまいましたが、小谷野さんには今後も、我が道を邁進していただくことを祈念しております。