[書評]仲正昌樹著『思想の死相』の書評が「諸君!」に

lelele2007-10-02



弊社の本が「諸君!」(文藝春秋)で紹介されるのは、はじめてのことです。
評者は、評論家で、北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会の代表でもある三浦小太郎さん。
ふだんは、「諸君!」や「正論」で、北朝鮮問題に関するかなり強硬な意見を書かれている方です。


書評のタイトルは、「全体主義に陥らぬために」。内容は、「思想家の解説書でこれほど『役に立つ』本は珍しい」という書き出しからはじまり、全体にわたって「べた誉め」です。
それはそれで嬉しいのですが、特筆すべきは以下の記述です。

 著者は様々な思想家を論じつつ、その中で本来不可能なはずの「生き生きとした」世界への回帰を唱える左右両派の日本における言説がいかに愚かで危険なものであるかを指摘していく。しかし、私自身を含めて、「人間かくあるべし」「このような行動を取らない人間は人非人」と説く論者で巷は溢れている。私自身北朝鮮問題ではそのような言説を書き続けて来たし、今後もそう説き続けることをやめることはできないだろう。
 だが、著者のような存在が常に触れていることが、私がファシズムであれスターリニズムであれ全体主義に陥らない歯止めにはなると思う。思想家のすべき仕事は人を安易な行動に駆り立てることではなく、世界と人間の危険性と愚かさに気づかせることだということを、これほど見事に教えてくれる本は数少ない。(「諸君!」2007年11月号、251ページ)

「諸君!」の誌面上で、弊社の本がこのように評されることについては、率直にいって歓迎すべきことだと思っています。仲正さんと私が、『デリダの遺言』と『思想の死相』で世に問いたかったのは、けっして左派の「生き生き言説」に対する批判だけでなく、同じことは右派にもいえるのではないか、ということだったからです。