華氏911

 マイケル・ムーアの「華氏911」を、ようやく見ることができました。
 ブッシュやネオコンの面々が党派なら、ムーアも党派であるということ。編集された映像は、ムーアが恣意的に選択したものであること。つまり、この映画を持ってブッシュとムーアのどちらが正義だと、簡単に判断することはできないような気がしました。(ブッシュが正義だなどと、私が考えていないことは、いうまでもありません)
 とはいえ、そういったことを差し引いても、アメリカのテレビでは放映されないような、戦死した兵士の姿やその家族の姿、無意味に殺されるイラクの人びとの映像を私たちが見ることには、それなりの意味があると思います。
 もっとも印象に残ったのは、ふたつのシーンです。
 第一は、飛行機がビルに突っ込むシーンを、数分間「音声のみ」で流した部分。これは、テレビでさんざんあのシーンを見ている私たちの記憶に、映像がないことにより、より印象強くあの映像を呼び戻します。効果的なやり方ですね。
 第二は、戦死した兵士の母が、ホワイトハウスを訪ねるシーンです。ホワイトハウス付近で座り込みをする、息子が戦死した女性に、「私の息子も……」とその母は共感します。そこへ、通りがかりの女性が登場し、「あの女はテレビ向けの演技をしている」と指摘します。母は、「そうじゃない、私の息子も……」と繰り返します。すると通りがかりの女性は、「アルカイダがいけないんだ」と一言いって立ち去ります。
 最後に母はこういいます。
「みんな、どうしてこんなに無知なんだろう。私も無知だった」