トークセッションについて 2

 またもや葉っぱさんから、問題提起をしていただきました。「関西方面でもトークセッションやろうぜ問題」です。さらに、中堅版元の編集者punktさんからも、「ほんとうは、やりたいんだよね」コメントをもらいました。返答が長くなりそうなので、新たなエントリーとして私の考えを記します。

 著者の住居も版元も、たくさん本が売れる書店も、すべて東京周辺に集中しているというのは事実ですね。弊社の本の売上動向を見ても、紀伊國屋書店新宿本店と三省堂書店神田本店、リブロ池袋本店、ブックファースト渋谷店で、全体の3割くらいを占めています。この4つの「店舗」で、弊社の売上の3割ですから、かなりのシェアとなっています。ちなみに、チェーン店ごとの売上動向では、1位がジュンク堂書店チェーンで2位が紀伊國屋書店チェーン、3位が三省堂書店チェーン、4位がリブロチェーンとなっています。こうした事情と出張旅費が出せないのが重なって、現状では、販売にしろイベントにしろ、「東京重視、やむなし」といわざるをえません。

 punktさんが「関西にはABC(青山ブックセンター)がない」とご指摘しておりますが、ごもっともです。たしかにABCの存在はでかいと思います。けっきょく、姜×宮台対談も宮台×北田対談も、ABC本店でやりましたし。書店経営者と書店人の「理念」のようなものが、そこにはあるような気がします。いわば「しゃべり捲くれ」的なものですね(なんていったら、ABCの方に「ちょっと違うぞ」といわれてしまうかもしれませんが、あえて……)。その理念には、私も100%共感します。ジュンク堂書店三省堂書店、リブロ、そして紀伊國屋書店にも同様の姿勢を感じます。
 で、「東京以外でイベントやりたい」の話。それこそ、イベントやって、それの起こしを本誌に掲載すれば、いいのになあと思ったりします。とはいえ、版元の規模が大きいほど、「一般公開」した「対談」の「起こし原稿」をバカにする傾向が強く、「書き下ろし」または「語りおろし」じゃなけりゃ「原稿」じゃないと思っている節がありますね。
 姜×宮台『挑発する知』も、某先輩から「内容は、すでに彼らがどこかで書いたり話したりしていること」を「うまくつなげた」だけのもの、などとご批評を賜ったことがあります。とはいえ、イベントに来た「のべ700人」の聴衆が楽しめて、「その程度のもの」が直販で1万部以上売れて、読者も版元も著者もすこし幸せになれれば、この『イベント+書籍化』企画は大成功だと思っています。

 イベントを書店でやってみて、気づいたことをひとつだけあげます。それは、書店人との接点が格段に増えて、書店人と著者との接点をつくれて、結果、書籍化の際に書店人の販売モチベーションがあがる、ということです。これは大きいですね。このことは書籍でも雑誌でも同じことでしょう。イベントをやって、活字にして、結果として本誌の売上があがるのであれば、上司も文句がいいにくくなるのでは。
 以前、ブログで書きましたが、「イベントができるのは、聴衆を集められるだけの人気がある著者を、その版元が抱えている場合にかぎられる」し、「そんなイベントは、所詮、東京でしかできないのだから、地方軽視だ」などといわれたこともあります。前者の問題については、「それなら、イベントが成立するような著者とコンタクトをとってください。それも版元の技量のうちです」としか答えようがありません。後者の問題については、前回と今回のブログで私の考えを記しました。東京以外を軽視しているわけではありません。やりたいのだが、そこでイベントをやる資金がないのです。
 資金の問題をのぞけば、版元にしろ書店にしろ、あとは「決裁」の問題になると思います。イベント開催の決裁権が、現場の書店人や末端の編集者にあるのかどうか。何でもかんでも上司に報告しながらすすめないと、話が進まないのであれば、イベントの実現はなかなか難しいでしょう。なにより著者は、「いまだから、これがいいたい」というタイミングだからこそ、イベントに参加するわけです。よって、「トークやりましょうか」と版元が著者に提案してから、イベントを実施するまでの「スピード」が、速ければ速いほどいいわけですね。
 そういう意味で、三省堂書店神田本店やABC本店、ジュンク堂書店池袋本店、リブロ池袋本店については、現場の書店人と話を進められるので、企画を持ち込みやすいのです。版元サイドは、私がひとりでやっているわけですから、時間のロスはありません。こうした書店サイドの「決裁」に関する問題も、書店でのイベントを考える場合のポイントになるような気がします。

 いずれにしても、前回も触れましたが、本がたくさん売れたら、かならず関西でトークをやります。葉っぱさん、しばらくお待ちください。(なーんて書いていますが、このままジリ貧で終わるかもしれませんし、いつ潰れてしまうかわからない虫けらのような版元であることは、十分に自覚しているで、あまり大きなことはいえないのですが……)