チマ・チョゴリと「在日」

しばらく更新できませんでした。なんとか生きておりますので、ご安心ください。会社経営も、『限界の思考』と『デリダの遺言』のおかげで、どうにか持ち直せるような状況となりつつあります。こうして次の企画を紹介できるのは、弊社の本を買っていただいた読者のみなさんのおかげです。ありがとうございます。

さて、ただいま作業中の本は、韓東賢(ハン・トンヒョン)さんのチマ・チョゴリに関する内容のものです。韓さんは、東大の院生で、さまざまなアプローチから「在日」というものを研究している方です。

いまつくっている本では、まずチマ・チョゴリの歴史が語られます。さらに、それが日本の朝鮮学校で制服として導入されるまで、そしてその後の経緯が、多くの在日女性への聞き取りによって、ていねいにあかされていきます。このオーラル・ヒストリーが出色です。
私もカンボジアでの調査や取材で、数多くの聞き取りを実践しました。韓さんは、在日の歴史を調べると、あまりにも文書資料がすくないことに驚いていますが、カンボジアもまったく同じ状況でした。文献でひもとけない歴史や文化は、オーラル・ヒストリーによって補完せざるを得ません。
もちろん、人の記憶はあいまいですし、聞かれた側は聞かれたことに対して、何を答えてもいいわけですから、信憑性の有無も問題にはなります。そういう意味では、一人ひとりの発言の「質」を重視しつつも、できるだけ多くのサンプルを集めるという「量」の問題も考える必要があります。でも実際に調査をやると、質と量を両立させることが、じつに困難なことだということに気づきます。
そうしたマイナス要因を考慮しても、調査対象に関する文献が不足している場合に、オーラル・ヒストリーは有効な武器となりえます。韓さんは、多くの調査対象者に対して質の高い聞き取りをしており、その成果からはチマ・チョゴリの歴史だけでなく、朝鮮半島と日本の近現代史も浮かびあがってきます。

これまで、チマ・チョゴリにしぼったかたちで、「在日」の歴史を振り返った本は出ていません。刊行は2月末を予定しているので、ぜひご一読ください!
作業の様子は、おいおいブログで報告していきます。