『週刊金曜日』の「読み方注意!」に書きました


同誌11月10日号の「読み方注意!」という書評コラムで、川北義則著『男の品格』を取り上げました。
この本、ちょっと読んでみると、もっともらしいことがたくさん書かれています。もっともらしい、というよりも、忘れられた常識やごく当たり前のことが書かれているともいえます。
とはいえ、「結局、もっともらしいことを書きながら、日本人の情緒やら精神性といった、どうにでも解釈できて、なおかつ『美しい国』と親和性のある言葉を持ち出していまう」(同誌43ページ)ところが問題なんですね。


書いてあることの八割くらいは、男であれば「だよね、だよね」とうなずかせるようなこと(まあ、うなずくかどうかは人それぞれですが)でありながら、その書かれていることの根本を、日本人の精神性に還元してしまうわけです。万単位で売れている本ですから、内容に共感するかもしれない人が万単位でいるでしょう。その人たちが内容の八割を占める「当たり前のことが書かれている記述」と残り二割の「情緒やら精神性の押しつけ」とを読み分けているのかといえば、おそらくそうでもないのでは。なにしろ書き方が巧妙なので。


私には、『男の品格』が巧妙に唱える情緒と精神性が、教育基本法改正や安倍政権のキャッチフレーズ「美しい国」とセットになっているように見えて仕方がありません。