ぬるい議論はやめよう


内田樹さん。


いまや、どこの書店にいっても著書が平積みされている、売れっ子の学者さんですね。


私は、たいていのことは「うむうむ」とうなづきながら、内田さんの文章を読んでいるわけですが、ふたつのことに関しては、読んでいて「ぬるい議論」だと思わざるをえなくなります。


ひとつめは、「フェミニズム」。内田さんのフェミニズム観については、弊社刊『バックラッシュ!』で斎藤環さんが指摘しているので、そちらをご参照ください。Googleのブック検索で読めますし。


もうひとつは、「お金と社会」、もしくはそこから敷衍(ふえん)して語られる「若者論」。


以下でリンクした内田ブログの「格差社会って何だろう」というエントリーの内容は、ちょっとまずいんじゃないかなあ。社会問題によっては、「想像の共同体」を持ちだして対処するのもアリだと私は考えていますが、格差の問題はそれを持ちだして対処できるようなぬるい状況ではないでしょう。


内田さんは、こう言います。

私がご友誼をたまわっている知友の中には資産数億の人から年収数十万の人までいるが、私が彼らの人間的価値を評価するときに、年収を勘定に入れたことは一度もない。

私にとって重要なのは、私が彼らから「何を学ぶことができるか」だけだからである。

たしかに「そうだったらいいなあ」とは思います。内田さんがご自身の経験で振り返るように、昔はそれでも生きていけたのかもしれない。


しかし、いまそんな優雅なことをいっていたら、「しょせん学者だ」とか「ブルジョアだ」「貧困の経験がない」「現場を知らない」などといわれても仕方がないのでは。内田ブログの同エントリーに対する「はてなブックマーク」の反応は、いたって真っ当だと私は思います。


ひとりの人間に、なにからなにまで「私たちが共感できるものを書け」といっても、それは無理なことでしょう。それを前提にしても、「あの内田樹」さんの不用意な発言は、いまや多くの読者に絶大な影響をおよぼす可能性があるだけに、もの悲しいものがありました。


以下に、内田さんのブログと、同エントリーに対する反応を2件、そして同エントリーに関する「はてなブックマーク」の一覧を貼り付けておきます。比較対象しつつ、読んでみてください。



内田さんのエントリー
http://blog.tatsuru.com/2007/07/24_0925.php


葉っぱさんのご意見
http://d.hatena.ne.jp/kuriyamakouji/20070727


赤木さんのご意見
http://www.journalism.jp/t-akagi/2007/07/post_229.html


はてなブックマーク」の反響
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://blog.tatsuru.com/2007/07/24_0925.php