毎日新聞、どうよ?

■ある人の薦めで、河内孝著『新聞社――破綻したビジネスモデル』(新潮新書)を買って読んだ。著者の河内さんは、昨年まで毎日新聞社の常務を務めていた方。同書は著者の長年にわたる新聞社勤めを活かしたもので、かなり徹底した新聞業界批判になっている。ていうか、一読して、まったくそのとおりだと思った。再販制に守られた護送船団方式の解体の必要性、電子メディアを利用した販売形態への移行、などなど。


で、問題はここから。「週刊文春」8月30日号に「読売が『1000万部』を割る日」という河内さんの手記が掲載された。同記事によると、退職後も毎日新聞社の社友であり、関連会社の顧問であった河内さんが、「一緒に仕事をしていた人間が一年もせずこのようなことを、のうのうと書くことに強い違和感を感じる」という同社の北村正任社長ら現役員によって、関連会社の辞任を迫られ、社友の称号を剥奪されたとのこと。


毎日新聞社の役員たちが河内さんのとった「仕打ち」は、ちょっと大人げないとしか言いようがない。ある役員が退職後に、みずからの経験を元に新聞業界を批判した。その批判はたいへん的(まと)を射たものであり、新聞業界の改革をまじめに考える少数の記者たちには、大絶賛されていた。でも、社長以下、役員にとっては気にくわない内容なので、筆者である退職した役員に対して報復をした……。毎日新聞社の役員さんたちは、何を考えているのか……。一応、「朝毎読」とかいわれるくらいのネームバリューがある新聞社なんだから、退職者の新聞業界批判に対して、目の色を変えて怒らなくてもいいんじゃないのかなぁ。


毎日新聞社とて私企業なので、役員が元役員の社友という名誉称号を剥奪しようが、退職後にやっていた関連会社の顧問職を辞めさせようが、別に問題はないでしょう。だがしかし、そんな技量の狭いことをやってるんだったら、「公器」とか「不偏不党」とか「権力の番犬」とか「ペンは剣よりも……」なんていうお題目は取り下げていただきたい。まあ、こんなことをやっていたら、「毎日新聞社って、そこらへんのワンマンたこ社長が経営している中小企業と同じく、気に入らない奴は排除したり報復するんだって」なんて噂が広まって、自分のクビを締めるだけだと思う。ていうか、表に出ないだけで、どこの新聞社も似たり寄ったりだったりして……。背筋が寒くなりますなあ。


それにしても河内さん。手記の末尾で「さらば、いとしきひと(毎日新聞社)よ」と記している。ほんとうに毎日が好きだったんですね。好きだからこそ、変わってほしい。だから本を書いた。そういう人を粗末にしてると、いまにしっぺ返しをくらいますよ、毎日新聞社(の役員)さん。

新聞社―破綻したビジネスモデル (新潮新書)

新聞社―破綻したビジネスモデル (新潮新書)