中国が膨張する!?

 読売新聞8月1日付朝刊からはじまった特集記事「膨張中国 第1部 新ナショナリズム」」は、かなり面白い内容です。総力取材で中国の行方を追う内容で、第1回の昨日は、1面トップで「反日デモ 1人も許さず」、6面で「民衆との衝突 恐れる党」という、反日デモと民衆、中国政府、そして日本政府の関係を報じたもの。
 8月2日は、1面が「ネット管理『鉄の長城』」、6面が「ネット世論 まるで津波」という記事。ネットが中国で、「都会から地方へ。エリートから大衆へ。広大な中国全土に目に見えない網が広がる。何の接点もなかった人と人をつなぎ、長い間、自由な移動も情報交換も許されなかった社会のあり方を変えようとしている」実情が、ていねいに論じられています(8月2日付朝刊6面)。
 先日、TBSテレビの討論で、中国に詳しい加藤紘一さんと中国が嫌いな安倍晋三さんが靖国問題を話していました。加藤さんは靖国慎重派、安倍さんは強硬派です。まったく論点がかみ合っていなかったのが印象的でした。加藤さんは、天皇の戦争責任が不明確なことが、靖国問題の発端であることを主張し、そんなあいまいな状況で首相が靖国公式参拝をすることに、外交上のメリットはない、といっていたような気がします。それに対し安倍さんは、戦争責任うんぬんは過ぎたことであり、現実に戦没者がまつられ、その遺族もたくさんいるのだから、首相の靖国公式参拝は問題ないとの見解。憲法第9条の解釈と同様に、既成事実化しているんだからいい、ということですね。さらに安倍さんは、中国が靖国問題にこだわるのは、外交戦略上のカードを増やしたいからだといい、そんな目的で靖国を使うのは不当だから相手にしなくていい、ともいっていたような気がします。
 これを聞いていて、私は加藤さんを見直しました。目先の票田や利権に目をとらわれず、日本にとってベターな選択は何なのかを、けっこうまじめに考えている政治家なのだなあ、と思いました。元外務相チャイナスクール出身であることを割り引いても、バランス感覚のある発言をしていました。一方の安倍さんは、イデオロギッシュでつじつまの合わない発言を連発していたのが目立ちました。
 これからの日本。いかにして中国とWIN×WINの関係を築けるのか、ということが、何よりも重要な外交上の問題だと私は思っています。WIN×WINの関係を築くためには、どれだけお互いの妥協を引き出せるのかが重要です。妥協を引き出すためには、相手の社会の実情を知る必要があります。それは政治家だけでなく、私たちにも課された宿題です。なにしろ、中国とのWIN×WINの関係を築き、東アジア情勢の安定と繁栄を目指す政治家を選ぶのも、中国との関係なんてどうでもいいけど、戦没者遺族会という票田を確保して連続当選を目指すだけのアホな政治家を選ぶのも、私たちなのですから。
 そういう意味で、読売の特集記事は、中国と日本との関係性を考えるうえでの出色の資料になりそうです。カンボジアで知り合った中国通の読売記者は、とても優秀で取材力のある人でした。読売国際部には、「憲法改正読売試案」などに関心のない、優秀で心のある記者が確実にいます。
 ぜひ読んでみてください。

※テレビでの加藤×安倍対談については、大筋では上記のような発言をしていたと思います。とはいえ、覚えている範囲で書いたので、間違った部分などありましたら、ご指摘くださいませ※