本の紹介です


最近、いただいた本をまとめて紹介します。


藤井誠二著『殺された側の論理』(講談社


ただ知り合い(悪友)だからというのではなく、日本のノンフィクションライターで、私がもっとも信頼をおいている人物は、この本の著者である藤井誠二さんです。
まず、基本的には高校時代から筆一本で喰っているのがすごい。いまは、たまたまラジオもやってるけど。
クールな文体の素となっているのは、身を削っての綿密な取材であり、取材対象者との関係構築については、すでに神業(とかいうと嫌がるかもしれないけど)の域に達しています。
藤井さんが犯罪被害者家族の肩を持っていることについて、転向だなんだと指摘する左翼の阿呆がいます。私には、自分は転向していないと勝手に信じ込んで、藤井さんのスタンスを批判する輩こそ、旧態依然の日和見主義者に見えます。そういう輩こそ、内藤さんが指摘するような「論点抱き合わせ」に没入する、二項対立が大好きなアンチ・リベラル勢力に見えます。
まあ、そんな輩は無視して、これからもほんとうの草の根の声(すこしだけ関わって、ちょっと新鮮な体験をしたから「草の根、草の根」といっている半端な方々とは異なるという意味での「ほんとうの草の根の声」)を取材し、それをかたちにし、筆一本で喰えるとこまで喰い続けてくださいね。

あと、この本の刊行祈念でイベントがあるそうです。日時は4月3日(火)の午後7時(開場午後6時半)から。場所は、書店の丸善・丸の内本店3階日経セミナールーム。参加方法は、当日、この本を丸善で買うと、先着100名様に整理券が渡されるそうです。

藤井誠二のブログ→ http://ameblo.jp/fujii-seiji/entry-10028433148.html

殺された側の論理 -犯罪被害者遺族が望む「罰」と「権利」

殺された側の論理 -犯罪被害者遺族が望む「罰」と「権利」

渋井哲也著『明日、自殺しませんか』(幻冬舎文庫


2005年に刊行されたものの文庫化です。
「いきずらさ系」の取材では定評のある渋井哲也さん。一読すればわかると思いますが、この本はかなり力を入れて取材し、執筆したものだと推測します。藤井さんによる「泣ける解説」も必読。
渋井さんも筆一本で勝負している人ですね(あっ、ちょっと前はバーテンもやっていたか……)。
筆一本勝負というのは、私が実行している零細出版社一本勝負と同様に、かなりリスキーな職種であることは間違いありません。安定なんて、あり得ませんからね。だから、藤井さんと渋井さんには、職種は違うけれどもある種の親近感を感じます。
酒を飲み始めると、けっしてみずから「帰ろう」といわない渋井さんの粘り強さ(笑)ゆえに、なかなか一杯呑む機会が得られないのが残念です。そんな粘り強さが、取材に活きているのかもしれません。

明日、自殺しませんか―男女七人ネット心中 (幻冬舎文庫)

明日、自殺しませんか―男女七人ネット心中 (幻冬舎文庫)

本田由紀・平沢和司編著『リーディングス 日本の教育と社会2 学歴社会・受験戦争』(日本図書センター


本田さん、ありがとう。ちょっと値が張る本なので、自分では買わなかったかも。
リーディングス」というタイプの本に出会ったのは初めてでした。何よりも引用する文章の選択が命になるわけで、それが確実ならば、このタイプの本はとても便利に使えると思いました。まあ、使うのは学部生や院生、そして研究者とかなんでしょうけれど。
リーディングスの編者だからといって、本田さんはけっして手を抜かない。はしがきは、以下の熱いメッセージで締めくくられています。

さて、どうしたらいいものか。ことは差し迫っている。この社会の、家族(階層と言ってもいい)、教育、地位(仕事と言ってもいい)の関係を急いで立て直すべき時期がとっくに来ている。この巻が、為政者のみならず社会成員の中でそうした危機意識を高め、多くの取り組みへの着手を促進するように役立つことを、祈らないではいられない。(はしがきより)

正直、「みなさん、買いましょう」というよりも、「図書館でもいったら読んでみてください」というタイプの本だと思います(本田さん、ごめんなさい)。
本田さんはいま、活きのいい院生たちが共同執筆する本を編集しているとのこと。楽しみにしております。